水素の効果は、パラダイムシフト

By | 2016年10月10日

 分子状水素(H2)の高等生物に対する多様な効果は、まさしく一種のパラダイムシフト(paradigm shift)と言える。2007年に私たちが論文を発表するまでは、分子状水素は高等生物に対しては何ら効果がないというのが常識であった。そのため、9年を経た現在も「水素には何ら効果がないはずだ。あり得ない。」という過去の常識にとらわれてしまう人がいるのは、そんなに不思議なことではない。
 「パラダイムシフトとは、その時代や分野において当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化することをいう。パラダイムシフトの例として、まず旧パラダイム(例:天動説)が支配的な時代は、多くの人(科学者)がその前提の下に問題解決(研究)を行い、一定の成果を上げるが、その前提では解決できない例外的な問題(惑星の動きがおかしい)が登場する。このような問題が累積すると、異端とされる考え方の中に問題解決のために有効なものが現れ、解決事例が増えていくことになる。そしてある時期に、新パラダイム(地動説)を拠り所にする人(科学者)の数が増えて、それを前提にした問題解決(研究)が多く行われるようになる。(ウィキペディアより引用)」
 基礎科学の発展を振り返ってみても、パラダイムシフトがおきた例は多くはない。そして、パラダイムシフトにより過去の常識が完全に否定された時でも、なかなか新しい常識を受け入れられない人が多かったのも歴史的事実である。

 私が大学1年生だった1971年3月に「科学革命の構造」というパラダイムシフトを主題とする1冊の書籍が出版された。科学史家のトーマス・クーン博士が執筆した本を科学史研究家の中山茂東大助教授(当時)が翻訳されたものである。どのようにパラダイムシフトが起きるのか、その常識の変換に人々はどのように対応したのか、などが興味深く書かれていた。4月からは、中山先生が主催された科学史のゼミに参加したので、中山先生から直接教えをうけることができ、その教えは今も鮮明に覚えている。そして、当時自分がパラダイムシフトを起こすような研究に携わることができたらすばらしいだろうと思ったことを思い出す。歴史に学び、現在の研究に生かす。大学の教養課程で学んだことが、現在の専門の研究の進め方に生きている。