正しく知ろう

放射能とどう向き合うか?
放射能を正しく知ろう。

(topics30)放射線ホルミシスとは?
(topics25)放射性物質の安全基準:「積算500mSvでも大丈夫」の資料を参考
(topics09)放射線による遺伝子の傷はどのくらい?
(topics07)食品の放射性汚染の目安:暫定基準よりも自分なりの基準を持とう
(topics06)またも内部被曝の説明の悪さ
放射能汚染に対する不安
放射線はなぜからだに良くないか
放射線とがん発症の確率
暫定基準値と健康
自然放射能はさけられない
人はなぜ、がんになるのか?
放射線はなぜからだに良くないのか?
がんを起こす他の原因と比較すると、放射線の影響はすくない。(2011.8.3)
豊富に野菜を食べることで、がんの発症率を下げられる。
若々しく、健康な毎日を送るためには。

放射線ホルミシスとは? (2011.12.7)
ホルミシス(hormesis)効果とは、生物に対して通常有害な作用を示すものが、微量であれば逆に良い作用を示す生理的刺激作用のことをいいます。低線量の放射線のプラスの効果は、放射線ホルミシス効果(Radiation hormesis)といい、研究が進められています。1年に100mSv以下の被曝によって健康被害が生じたというちゃんとしたデータはなく、逆に健康にプラスの働きをすることを示すデータがたくさんあります。最近、抗加齢医学会雑誌Anti-aging Medicine(2011年12月号)に放射線ホルミシスの解説論文を書きましたので、参考にしてください。
放射線を怖わがるあまり、子供を外で遊ばせず、成長に支障をきたしているのは、とても心配です。ストレスによる被害も心配です。

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放射性物質の安全基準:「積算500mSvでも大丈夫」の資料を参考 (2011.10.27)
10月27日食品安全委員会は、厚生労働大臣に対し、「食品健康影響評価の結果の通知について」として、食品中に含まれる放射性物質の評価を行っています。
食品安全委員会のレポートを実際に読んでみると、いろいろな面から検討されていることがわかります。
結論だけでなく、その検討経緯も含めてわかりやすく説明していただきたいものです。
そのレポートのなかで、参考とした資料もリストアップされています。参考にしたものはA、参考のサポートとしたものをB、その他は(-)として51の報告を挙げていて、Aは9つだけです。そのAの中でも一番にあげられているのはインドのケララ地方の放射線量と健康の関連についてのレポートで、信頼できる結果としています。インドのケララ地方では、積算被曝量が500mSvにも達しますが、健康被害は全くないということです。もちろん、この地方には、子供も住んでいますし、妊婦もいます。それを含めて他の地方と比べて、なんの悪い影響が認められないという結果です。
食品安全委員会の結論としては、生涯の積算放射線量は、100mSvにおさえるべきであると答申していますが、一生で100mSvの放射性物質を食べても「がん」になることを意味しているわけではないと報告しています。500mSvでも、そんなに気にすることはないということですので、過剰な反応は「過ぎたるは及ばざるが如し」です。

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放射線による遺伝子の傷はどのくらい? (2011.8.26)
放射線が危険だという方は、いくら微量の放射線でも遺伝子に傷をつけるのだから危険だと言います。ところが、放射線の影響が全くなくても遺伝子は毎日毎日傷ついているのです。
拙著「体が若くなる技術(サンマーク出版)」では、「私たちの遺伝子は『一日に10万カ所』も傷ついている」と書きました。そのなかで、放射線も遺伝子に傷をつける原因であることも書かれています。同時に、人間は傷ついた遺伝子を修復しているとも書きました。
では、放射線の影響がない場合の遺伝子の傷と放射線によって生じる遺伝子の数を比較してみましょう。下の表をみると一目瞭然。100ミリシーベルト程度の放射線によって生じる傷なら自然に生じている傷に比べて、わずかであることがわかります。

#13図-放射線と遺伝子

このような数字をきちんと見れば、微量の放射線をむやみに怖れる必要はないことがわかります。
関連事項は、「体が若くなる技術(サンマーク出版)」を読んでください。

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食品の放射性汚染の目安:暫定基準よりも自分なりの基準を持とう (2011.8.26)

はじめに

お米の収穫期になりました。福島県の会津地方で収穫した稲穂には放射性物質が検出されなかったことで一安心です。

放射能には色も臭いもありませんし、放射線をあびたからといって痛さを感じるわけでもありません。私たちは五感によって放射線を感じることができないのです。得体のしれないものに対して、怖さを感じるのは当然のことです。でも、放射線は測定器によって測ることができます。そこで、放射線を正しく測定して、正しく知らせる・正しく知ることがなにより大切で、それが前提となります。

1.自分なりの基準を持とう

放射線の強さはシーベルト、放射性物質の多さはベクレルであらわされます。でも、◯○シーベルトやXXベクレルと言われても多いのか少ないのか、危険なのか危険でないのか、わからなければ意味のない数字になってしまいます。
放射性物質には規制の基準として暫定基準値が今年の福島原発事故のあとに急遽決められましたが、困ったことに何を基準に決められたのかきちんとした説明がないので、この暫定基準値を超えると危険なのか、それとも大丈夫なのか、わからない状態になっています。
そこで、自分なりの基準を持つことが必要です。そのために、自然放射能と他のがんの要因と比較しましょう。

2.外部被曝の自然放射能:宇宙から大地から

地球上では平均すると、宇宙からも大地からも、それぞれ年間0.39ミリシーベルト、0.48ミリシーベルトの放射線が注がれています。微量の放射線でも避けたいと思ってもそれは地球上で生きているかぎり無理なことなのです。
大地からの放射線の強さは地域によって違いがあって、世界には放射線の強い地域があり、そこにも多くの方が住んでいます。中国の陽江県年間3.5ミリシーベルト、インドのケララ州3.8ミリシーベルト、イランのサムール10.2ミリシーベルト、ブラジルのガラパリ5.5ミリシーベルトです。これらの数値は、地域の平均です。日本では大地からの放射線は比較的低く0.43ミリシーベルトです。
このように放射線が強い地域もあるのですが、発がんの頻度が多いことはなく、むしろ近くの地域に比べて、長寿の傾向にあります。 高地ですと宇宙からくる放射線が強くなり、飛行機に乗ると多くの放射線をあびることになります。このことから考えると、余分に年間10ミリシーベルトをあびても健康に悪影響があるとは考えられません。

3.内部被曝の自然放射能:空気から食べ物から:10,000ベクレル食べると0.13ミリシーベルト

空気中にも放射性気体ラドンがあり、それを吸って年間1.26ミリシーベルトの放射線をあびています。国内でも、ラドン温泉やラジウム温泉では、ラドンの放射線が強いのですが、例えば三朝温泉地域では発がん率がずっと低くなっています。

また、食物にも放射性物質が含まれており体内の放射性物質を合計すると年間0.29ミリシーベルトの放射線をあびています。 60kgの体重の方ですと、皆さん7,000ベクレルの放射性物資を必然的に内部に持っています。これは、核実験がなくても、原発事故がなくても自然界から必然的に摂取して体内に留まる量です。まず、自分たちが7000ベクレルの放射性物質をもっているということを前提として、汚染した放射性物質の状況を考えれば感覚的に理解できるのではないかと思います。

内部被曝と外部被曝を合計すると、日本の平均は1.5ミリシーベルト、米国では3.0ミリシーベルト、世界の平均では2.4ミリシーベルトです。
放射線量と放射線物質の関係ですが、放射性セシウムの場合一度に10,000ベクレル食べると0.13ミリシーベルトの放射線を余分にうけることに対応します。ですから、年間10万ベクレル(一日270ベクレル)の放射性物質を日本で食べても、米国での生活よりも放射線をあびる合計量は少ないのです。

4.放射性物質はいつまでも体内には留まらない

内部被曝は怖いと主張される方がいます。そのときに、持ち出されるのがα線の被害です。放射線にはそれぞれ性質が違う種類があって、たしかに内部被曝で怖いのはα線です。しかし、放射性セシウムはα線を出しません。また、放射性ヨウ素もα線をだしません。
放射性セシウムの半減期は30年です。そのため放射性セシウムが一度体内に入ると30年間も体内に留まってしまうと誤解される方がたくさんいらっしゃいます。10歳の子供が放射性セシウムをとったら、それが半分になるのは40歳だと言うわけではないのです。セシウムは、水によく溶ける物質で、乳児なら10日、10歳の子供なら1ヶ月、大人なら70日で半分になります。10歳の子供が放射性セシウムを食べても、1年後には4000分の1になります。乳児や子供は放射線の影響も大きいのですが、排出する速度も速いのです。
放射性セシウムは、筋肉に「蓄積する」と言われることが多いのですが、蓄積するわけではなく、細胞の多いところにセシウムがあるだけと考えてください。「蓄積する」というと、いつまでも留まると誤解して不安になってしまいます。

5.個人的視点と公共的視点

1000ミリシーベルトあびると5%の人が余分にがんで死亡するというのが、広島・長崎の調査の結果です。もしもの仮定ですが、比例計算すると、10ミリシーベルト被曝すると、0.05%のかたが、がんで余分に死亡するという計算になります。日本では、年間110万人が死亡していますので、10ミリシーベルト余分にあびた人が日本人の10%とすると3.3万人が「がん」で死亡するところが55人が余分に「がん」で死亡し、合計33055人になります。これは、仮定を入れた計算ですが、計算であっても年間55人というのは、無視できない数字です。殺人事件で55人も殺されたら大事件ですし、食中毒で55人も死んだら大変です。また、交通事故で年間数千人死亡することを考えたら、その1%です。放射線の影響を多いと感じられる人と少ないと感じられる方がいるのではないでしょうか。
放射線を年間100ミリシーベルトあびたときに、「がんになる」というちゃんとした研究結果はありません。あるとしても影響が少ないので、「ある」のか「ない」のかはっきりできないのです。別の言い方をすれば、「はっきりしないくらい少ない」、ということです。
個人的に考えるときは、微量放射能のようなはっきりしない要因の場合は他の要因と比較して総合的に選択する。公共的な立場あるいは行政的な立場からは、仮定のある可能性であってもきちんと対処して安心を与えるという観点が大事だと思います。

6. 放射線の害はタバコと比べると非常に少ない

高線量の放射線は、がんの原因となりますので、がんの他の要因と放射線の影響を比較することができます。がんの発症原因は大規模研究から明確な結果がでていますので、これらを比較すれば、どの程度の害があるか感覚的に理解できるはずです。それぞれの原因と10ミリシーベルトをあびたときのがんになりやすさの比較をしました。ただし、10ミリシーベルトの影響は、1000ミリシーベルトの効果を比例計算したもので、10ミリシーベルトでがんになるという結果はありませんので、「〜〜以上」としました。
(1)喫煙の影響は10ミリシーベルトの200倍以上
(2)受動喫煙の影響は10倍以上(たばこ1日10本吸う人と同居)
(3)運動不足の影響30倍以上
(4)野菜不足の影響20倍以上

(4)ストレスは、定量化が難しいのですが私の推定では、200倍以上です。
受動喫煙では、タバコを1日10本吸う人が同居していると、年間100ミリシーベルト以上あびているのと同じということです。放射性セシウムに換算すると、770万ベクレル(1日2万ベクレル)以上になります。こう考えると、受動喫煙を含め喫煙の影響は放射線よりもはるかに大きいことがわかります。

まとめ

放射性セシウムの場合一度に1万ベクレル食べると0.13ミリシーベルトの放射線を余分にうける対応します。

年間10万ベクレルの放射性セシウムを日本で食べても、米国での生活よりも放射線をあびる量は少ないのです。

タバコを1日10本吸う人が同居していると、年間100ミリシーベルト以上あびているのと同じで、放射性セシウムを年間770万ベクレル食べるのと同じです。

乳児や子供は放射線の影響も大きいのですが、排出する速度も速いのです。

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またも内部被曝の説明の悪さ (2011.8.18)
(放射能:水素による防御 を合わせてご覧ください)。

今朝は憂鬱な朝だった。朝日新聞の1面トップの記事は間違った恐怖心を与えかねないものだったからだ。

福島の子ども、半数近くが甲状腺被曝 政府調査で判明
・・・・検査は3月24〜30日、いわき市と川俣町、飯舘村で0〜15歳の子どもを対象に実施した。原子力安全委員会が当時、精密検査が必要だと決めた基準は甲状腺被曝線量が毎時0.20マイクロシーベルト以上。1150人のうち、条件が整い測定できた1080人は全員、0.10マイクロシーベルト以下だった。この日、説明会には、検査を受けた子どもの保護者ら約50人が参加した。対策本部原子力被災者生活支援チームの福島靖正医療班長は「問題となるレベルではない」と説明した(新聞記事より抜粋)。

「問題となるレベルではない」という説明も載せてはいるが、「半数近くが甲状腺被曝」という見出しだけが一人歩きしかねない。
「あなたの内部被曝は、1時間あたり0.1マイクロシーベルトですから、問題となるレベルではない。」だけでなく、対策本部の担当者も新聞も、もう少し丁寧な説明ができないものか?
わかりやすい説明として、自然放射能による内部被曝と比べてどうかと説明するのがもっとも適切と思う。
自然放射性物質であるK-40は、人体中に必然的に約4000ベクレル(Bq)存在している。飲食で人体中に取り込まれるK-40は、1日あたり約50ベクレルだが、人体中の余分のカリウムが排出されるのに伴って同量が排出される。このK-40による年間の被ばく線量は、170マイクロシーベルト(0.17ミリシーベルト)。その他にも自然界に存在する放射性物質を毎日体にとりこんでいるので、体重60kgの人なら、7000ベクレルの放射性物質を必然的にもっている。これは、0.3ミリシーベルト相当し、地球で生きている限り避けることのできないもの(子供なら、その半分)である。
1時間あたり0.1マイクロシーベルトが3月30日なら、3月14日で、4倍の1時間あたり0.4マイクロシーベルトのはずで、合計被曝は30マイクロシーベルト程度になる。「自然放射能の内部被曝の1.2倍くらいになりました。」くらいの説明はして然るべきではないか!?

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放射能汚染に対する不安(2011.8.3)
本来、学問や学術的な研究は、中立的なものです。
ところが、こと原子力や放射線については、論じる側の人間が、過去の経緯を背負って、
学者を含めて原子力発電所(原発)建設推進に賛成か反対か、どちらかの立場に立っていた場合がほとんどです。
原発反対という立場の方は、微量の放射線でもからだに悪い影響を及ぼすから放射線はゼロでなくてはいけないという論陣をはってきました。一方、原発推進の立場では、一定のレベルまでの放射線は問題ないという論拠のほうが都合がよかったわけです。
それぞれの立場によって左右されているかもしれない意見が大量に報道されているわけですから、
それを聞いている一般の人たちが、戸惑い、本当に大丈夫なのか、と疑心暗鬼になるのも仕方がないことなのです。
私自身は原子力行政には全く関与してこなかったので、中立的な立場で意見が発信できます。

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放射線はなぜからだに良くないか(2011.8.3)
一方で、放射線被害についての報道が引きも切らさず、行われているものの、
そもそも、「なぜ、放射線がからだに良くないのか?」について、正確に理解できている一般の人は少ないように思えます。
なぜかというと、放射線の害についても、物理学や工学の放射能の専門家からの目線で語れていることが多く、
からだの構造・しくみについての生物学の専門家から語られることが少ないということがあげられます。
放射線の物質的な特性も重要ですが、からだの構造からどのような影響を与えるのかが、
もっと語られても良いはずです。
放射線は毒で、その毒がからだの中に次第に蓄積していくと思っている人は少なくありません。
次に、放射線の害について、いたずらに恐怖心をあおりたてるのではなく、
わたしたちのからだが持つ基本的な構造・しくみの面から、わかりやすく説明したいと思います。
その上で、からだを守るために私たちができることを示せればと考えています。

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放射線とがん発症の確率 (2011.8.3)
<1>気になる微量の”被曝”
ミリシーベルトという放射線の単位はお茶の間でもなじみ深い言葉になりました。500ミリシーベルトを一度にからだに浴びると、白血球の減少など、色々異常が出てくることについては、
立場を超えて専門家の中で意見が一致しています。
ところが、被曝線量が100ミリシーベルト以下という数値については、
将来にわたっても全く安全なのか、それとも将来にはからだになんらかの影響を及ぼすのか、
立場の違いも含めて、専門家の意見が一致していないのです。とくに年間100ミリシーベルトとなるとなおさら専門家の意見が異なってきます。
一般の方が何を信用したらいいのかと心配になるのは無理もないことです。
放射線が危険だという立場からすると、放射線の数値が1/10なら1/10の害があり、
1/100なら1/100の害、1/1000なら1/1000の害があるということになります。
これでは、永遠に放射線の害は0にはなりません。
だから、100ミリシーベルト以下でも、体に悪いということになります。「
微量でも危険ですよ」ということを言っている人は、「危険性はゼロではない」と言っているわけです。そして、放射線量と影響の確率を比例計算するのがもっともよいだろうという考えから、確率を計算しています。
しかし、実際には、確たる根拠はありません。
根拠として挙げられている論文も実際に読むと、確かな結果をひきだすものではないことがわかります。
人間が、微量の放射線を浴びたというのは、広島、長崎、チェルノブイリ、スリーマイル、鉱山や原子力施設で働く人などしか、経験が多くはないのです。
もちろん、放射線の高いところでは、たくさんの方が亡くなっています。
しかし、100ミリシーベルト以下の微量の放射線が直接の原因で死亡したという確たる証拠はありません。
確たる証拠がないというのは、「確たる証拠が出ないくらい影響が少ない」あるいは「影響が小さすぎて確たる証拠はでない」ということでもあります。ただし、「安全」とも「安全でもない」という場合は、
確たる証拠がないのなら、最悪の場合を想定して安全対策すべきであるという考えは間違っていません。
一方で、動物実験では、低線量の場合は全くがんを生じさせないことが報告されていますし、動物実験を通じて、少し放射線を浴びると抵抗力ができて、元気になるということがわかってきています。
微量の放射線は、動物実験の結果から言うと必ずしも悪くはなくて、むしろ、からだには良い場合もあると言えます。
また、人間の場合でも、ラドン温泉で有名な鳥取県の三朝沢温泉の近くに住んでいる人など世界各地の自然放射線の高い地域では、むしろがんが少ないと報告されています。

<2>1年間に20ミリシーベルトを少しずつ浴びるとがんで死亡する確率は0.1%上がる。
被曝量がいくら少なくても害は残るという立場で、
年間20ミリシーベルトを少しずつ浴びると、どのくらい「がん」で死亡する確率が上がるかという計算するには、
高線量を一度に浴びた被曝者のがんで死亡した人を基準にそのまま比例計算します。
すると、
年間20ミリシーベルトをあびると0.1%の方ががんで死亡する確率が余分に高くなるという計算になります。
日本人で「がん」で死んでいる割合が現在の約30%ですから、30.1%になるだろうと計算されます。
この0.1%という数字に対して、どのように考えるのかが、意見の分かれるところです。比率でいうと1,000人のうち「がん」で亡くなる人が1人増えるかもしれないということです。
日本の年間死亡者が120万人であることを考えれば、年間の死亡者が1200人増えるかもしれないということになります。行政的には、年間1200人も死亡するかもしれない原因を放置してよいということにはなりません。
個人としては、人それぞれで、生活も違うし、食生活も違うし、生活習慣も違うし、ストレスのある人も無い人もいるし、
様々なほかの原因の方が大きいので0.1%程度は無視できるという考えもあります。また、
無ければ無いに越したことはよいという考えも当然あります。

<3>1年間に20ミリシーベルトなら避難する必要があるか?
現在の避難勧告の基準である年間20ミリシーベルトを浴びると、
どのくらい「がん」で死亡する可能性があがるかというと、上記のような比例計算では0.1%です。
それも、20~30年後に、放射線が原因で0.1%の人が「がん」で亡くなるかも知れない、ということです。
例えると、60歳の避難住民の1000人の中の1人が、20~30年後に、
80~90歳で「放射線が原因のがん」で亡くなるかもしれないということになります。現実には1000人のうち300人はがんで死亡するはずですので、300人が301人になる計算です。
今、考えなければいけないのは、上記の可能性を理由にして、長年住み慣れた自分の土地を離れ、
何年もかけて育てたブランド牛を捨ててまで、避難することが最善の対処の仕方なのかということです。人それぞれの価値観は違うはずです。
正しい情報を知っていただいて、それぞれの人の価値観に照らし合わせて行動を選択してもらうべきではないでしょうか。
お年寄りが他の土地へ行って、そのストレスが原因で亡くなってしまう確率の方が高いと言えます。
チェルノブイリの場合は高線量の被曝で亡くなった人は多かったのですが、低線量の放射線をあびた人への健康被害は、放射線が直接の原因ではなくて、
精神的なストレスがその原因だと報告されています。
恐らく、現在、避難されている人たちの中では、今後「がん」を発症する方が増えてくるかもしれません。
それは、放射線が理由ではなくて、ストレスの増大が原因のはずです。
子供を放射線から護らなくてはならないので、避難させるべきとか疎開させるべきであると主張する人もいます。しかし、家族とはなれて生活する影響のほうが大きいのではないでしょうか?
放射線から子供を護るために、年間1ミリシーベルト以下に抑えたいということで、もし、原発事故が原因の放射線を年間1.4ミリシーベルトあびることになる地域の子供を米国に集団疎開させるとします。もちろん仮定の話です。日本の平均自然放射線は、年間1.5シーベルトなので、合計年間2.9ミリシーベルトになります。米国は、年間平均3ミリシーベルトですから、かえって高くなってしまいます。

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暫定基準値と健康(2011.8.3)
放射線汚染には、いろいろな基準値があります。年間1ミリシーベルトに抑えなくてはならないとか、放射線管理区域では、◯○ミリシーベルト以下に抑えなくてはならないとかの基準値がすでにありました。この数値は、人間の健康に与える根拠から発した数字ではなく、「いくらなんでもこのくらいは守りなさいよ」という数字です。
基準値がなければ、放射線汚染物質を垂れ流す人や会社や研究所もでてくるでしょう。放射線汚染物質を垂れ流させないためには、基準値が必要で、「このくらいは守れるだろう」という数字です。基準値がなければ、放射線を扱う人はいくらでも危険に仕事を押し付けられるかもしれません。
ところが、一般のかたへの基準値はなかったのです。最近の野菜、魚、牛肉には「暫定」基準値が定められました。「暫定」というのは、今回の福島原発事故後に「暫定的」に定められた数値です。この数値の根拠はだれも説明していません。健康への影響が明らかになっていないのに、無理に定めた数字ですから、混乱するのは無理もありません。
このように根拠なく人為的に決まられた数字に振り回されるのは、ごめん被りたいものです。では、何を基準に考えたらいいでしょうか?ひとつは、自然放射能です。もうひとつは、放射線以外にがんを引き起こす要因との比較です。

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自然放射能はさけられない(2011.8.3)
放射能は物質のおおもとである原子が別の原子に変化するときに生じます。世界の平均の自然放射能は、2.4ミリシーベルト、日本では、1.5ミリシーベルトです。地域によって、自然放射能の強さはちがっていて、ブラジルやインドでは、20ミリシーベルト以上の地域もありますし、イランでは年間100ミリシーベルト以上の地域も存在します。しかし、いろいろな調査で、これらの地域に住むひとの健康被害があったという報告は皆無なのです。
自然放射能は、宇宙線から0.39ミリシーベルト、大地から0.48ミリシーベルトです。これは、外部被曝です。高地ですと、宇宙線が多くなりますし、岩盤のところでは、大地からの放射線が多くなります。飛行機に乗れば、当然宇宙船をたくさん浴びることになりあます。
内部被曝としては、空気から1.26ミリシーベルト、食物から0.29ミリシーベルトの放射性物質を毎日摂取しています。この放射性物質は、核実験がなかろうと、原発事故がなかろうと必然的に生じているものです。私たちは、体重60kgの人なら、有無をいわさず7000ベクレルの放射性物質を体にもっています。
私たちの体に7000ベクレルの放射性物質をもっているなら、200ベクレルの放射性物質を食べても平気だろうと考える人もいるでしょうし、それ以上は絶対いやだと思う人もいるでしょう。でも、現実に、7000ベクレルの放射性物質をもっていることを、是非覚えて得ておいて判断してほしいと思います。

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人はなぜ、がんになるのか? (2011.8.3)
なぜ、人は「がん」になるかというと、遺伝子が壊れるからです。
但し、私たちのからだでは、何と、日々、1細胞あたり5万か所から20万か所位で遺伝子が傷ついているのです。
私たちのからだというのは、毎日傷ついては直し、傷ついては直し、という作業をずっと続けているわけです。
直せないで、変化したままになって残ってしまう傷は、一日10〜100カ所程度です。
一方、20ミリシーベルトの放射線を一度にあびても、遺伝子が完全に切れてしまうのは1つの細胞では1カ所にすぎません。
1年間で合計20ミリシーベルトを浴びる場合は、1つの細胞では1日に平均0.0027カ所しか遺伝子は完全には切れません。

ちなみに余分な放射線を浴びなくても、ひとつの細胞で1日に1カ所程度は遺伝子が完全に切れてしまっています。その切れてしまった遺伝子もちゃんと直してくれる機能を私たちはもっています。そんなに心配しなくても
よいことがわかるでしょう。
放射線以外のがんの原因を考えてみましょう。最も影響が大きいのはタバコで、タバコが原因のがんで死亡するのは、がん全体の15%以上です。
計算上は、喫煙の害は年間20ミリシーベルトの放射線の影響に比べると100倍以上です。
まずは、このようなからだのしくみや、数値の持つ意味を理解した上で、放射線の影響について評価すべきだと考えます。

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放射線はなぜからだに良くないのか?(2011.8.3)
物質をつくる原子の中央に+の陽子があり、その周りを電子がまわっています。
放射線がモノに当たり、電子がまわっているところに当たると、電子がポンと吹っ飛びます。
電子が吹っ飛ぶとどうなるかというと、遺伝子が近くにあると遺伝子を壊します。放射線が水と反応すると活性酸素が発生します。からだの70%は水ですから、放射線が反応するのも水が一番多いのです。
問題は、この活性酸素に遺伝子を破壊する作用があることです。活性酸素は、細胞を酸化させ、老化やさまざまな病気を引き起こす原因になります。
ちなみに、90%の活性酸素がつくられている場所=「ミトコンドリア」、がわたしの専門分野です。
一方で、わたしたちが呼吸でからだに取り入れているものの、約1%から2%が活性酸素になります。
エネルギーをつくるためには、呼吸する必要があり、その結果として活性酸素の発生は仕方がないことです。
わたしたちのからだは、この活性酸素などによって傷ついた遺伝子を、毎日5-20万個所で修理しているのですが、
ここに極端に多量の放射線があたり、活性酸素が極端に増え、
遺伝子の修理が追い付かなくなると、「がん」が発症するのです。
しかし、遺伝子は1カ所傷ついただけではがんにはなりません。がんを起こす遺伝子はたくさんあり、逆にがんをおこさせないようにする遺伝子もあります。たまたま、そのがんを起こす遺伝子やがんを抑制する遺伝子のなかで少なくとも5カ所以上が傷つき修理されなかった場合にだけ、がんになることがわかっています。
もし、放射線が遺伝子を1カ所直接傷つけても、それだけではがんになりませんので、その後の遺伝子の傷を少なくすることが大切なのです。
つまり、放射線に対処するということと、遺伝子を破壊する活性酸素を少なくするにはどうしたら良いか、
ということは同じことなのです。

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がんを起こす他の原因と比較すると、放射線の影響はすくない。(2011.8.3)
100ミリシーベルト放射線で「がんになるか」、「ならないか」については、確たる証拠はありません。しかし、タバコ、適度の運動、野菜、飲酒などのがんへの影響は、「確たる証拠」がたくさんあります。国立がんセンターでは、がんの原因とその程度を公表しています。
喫煙は、20ミリシーベルトの放射線をあびた時の害に比べると100倍以上。タバコの煙には、活性酸素を発生する物質がたくさん含まれています。
野菜嫌いや受動喫煙(同居人にタバコ一箱を吸う人がいた時)の影響は、20ミリシーベルトの放射線をあびた時の害に比べると5〜10倍以上。野菜には、活性酸素の害をなくす抗酸化物質がたくさん含まれています。
運動不足の影響は、20ミリシーベルトの放射線をあびた時の害に比べると、10倍〜30倍以上。運動することによって、活性酸素を消す働きが向上します。
むしろ、被曝を避けるために、外出を控えて運動不足になったり、野菜を食べなかったりすると、逆にがんのリスクがあがってしまうのです。
放射線管理区域の何倍とか、基準値の何倍の放射線というよりも、私たちの生活で実感できる原因との比較をすれば、実感として納得できるのではないでしょうか。
また、数字としては示しにくいのですが、ストレスも非常に大きながんの原因です。「がんになってしまうのではないか」という親の不安な心理状態を感じるとそれを反映して、子供も不安になりますし、
そういう心理的な影響がなにより大きいはずです。
心的ストレスは活性酸素が発生する大きな原因です。
また、放射能が原因であってもなくても、がん細胞ができた場合は、毎日4000個のがん細胞が免疫細胞によって殺されています。
この免疫機能もストレスが大敵です。
子供はがん細胞を殺す免疫機能はまだ発達途中ですので、とりわけストレスを感じさせなくすることが大切です。最近の研究では、「笑い」ががんを殺す免疫機能を向上させることがわかっています。是非、生活に取り入れてください。

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豊富に野菜を食べることで、がんの発症率を下げられる。(2011.8.3)
放射線の被曝によって生じる「がん」をどうして予防するかを考えると、わたしたちのからだの中でつくられている活性酸素をどうやって制御するかということと、
遺伝子をどうやって修復するのかと同じ話になります。
放射線にあたろうとあたるまいと、「がん」は「がん」で、同じものですから。
活性酸素の害を少なくする対処法として、抗酸化食品を食べることが挙げられます。
「がん」になってしまうのではないかという親の心理状態を反映して、子供も不安になりますので、適量のサプリメントを飲むことによって安心できるなら、それもいいでしょう。

なにより、心的ストレスは活性酸素が発生する大きな原因です。
1年間で20ミリシーベルトの放射線が原因の死亡への影響はあるとしても0.1%程度ですから、十分
野菜を食べることで、放射線の影響をなくすことができます。野菜嫌いでは、がんになりやすさは、1.08倍になります。
抗酸化物質を豊富に含む食品には、赤、黄や緑の色をしたものが多いです。
赤、黄、緑の色は電子が広い範囲をまわっていることを意味し、還元力が強い食材と言えます。
成分としては、カロテン、リコピン、アキサチンサン、ポリフェノールなどです。
野菜では、「赤」ではにんじん、赤ピーマン、「緑」ではホウレンソウなどの葉もの野菜などです。
また、ニンニクも効果的であることが分かっています。
今回、皮肉なことに、からだに良いものが汚染されていますが、放射線の影響と、
野菜を摂取することの効能の両方を考えた場合、個人的には暫定基準を超えているとしても、
ホウレンソウなどは積極的に摂りたいと思っています。

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若々しく、健康な毎日を送るためには。(2011.8.3)
放射線の影響を理解するということは、自分のからだを理解するということです。
若々しく健康な毎日を送るためには、マニュアル的にこうすると誰にでも良いとか、
ワンポイントですぐに良くなるとか、そういうことはあり得ないのです。
少し面倒でも、適度な刺激を与えればそれに対抗力ができて必ず良くなります。運動も適度な刺激のひとつです。
これらの刺激に対して、からだが対抗性が出てくること、これが若くなる技術・秘訣です。
但し、無理をすると壊れてしまいます。
「頑張らないと何もできない」、「無理をすると続かない」、この「ガンバリ」と「無理」の間を
、是非ご自分のからだと相談しながら、見つけてください。
誰でも、老化して最後は死に至るわけですが、直線で右肩下がりに下がるのではありません。
遺伝子も、生まれた時に完成品であったものが、ただ単に徐々に壊れて行くだけではなく、
壊れては直し、壊れては直しということがからだの中で行われているのです。
直す力があって、また壊れて、日々壊れては直しする中で、年齢とともに、全体として壊れていくのです。
直す力を一生懸命つくっていけば、若さと健康が保たれるわけです。
直す力には、エネルギーが必要です。からだのなかのエネルギーをつくる力を大きくするには、エネルギーが足りない状態をつくることが大切です。適度な運動の他に、姿勢を保つことも大切ですし、ときには、カロリー制限して、エネルギーが足りないよと感じさせることも大切です。そのためにも、からだのしくみを理解し、自分なりの対処法を見つけ実践することが大切だと思います。

週間文春

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