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“水素発生入浴剤“の中には、やけどの原因となるものがあると、国民生活センターが注意呼びかけの裏情報


最近、水素に関する話題が多くなっています。国民生活センターは、7月21日に水素入浴剤による“やけど”の可能性についての記者会見をして、TBSなどでも放映されました。
このパック型水素発生剤は、粉末状の入浴剤とは異なり、アルミニム粉と酸化カルシウムの混合物が袋に入っています。そして、袋ごとお風呂につけると、水と反応して水素を発生しますが、同時に多量の熱を発生します。というよりも、その原材料は発熱剤として開発された経緯があります。高級レストランやテーマパークなどでも食品の保温によく使用されています。登山のときのお湯を沸かすのにも使われています。この素材は、お弁当をあたためるのに使う酸化カルシウムよりも多量の熱を発生します。そのため、やけどをしてしまうほどの熱を発生するのです。
そのときに、副産物として水素ガスを発生するので、水素入浴剤に使ったという経過です。しかし、その水素ガスは99%で、純度としては高くありません。清涼飲料水である水素水の原料となる水素は、99.95%〜99.99999%の純度の水素ガスが使われています。99.99999%の最高純度の水素ガスを使っているのは、出雲神社の水系をつかって製造販売されているメディソル社の水素水「縁(えにし)」と「結(ゆい)」です(二つ合わせて縁結び)。
くり返しますが、粉末状の水素入浴剤とは別の物で、今回の発表では、水素入浴剤全部が悪いような十把一絡のような議論はしていません。やけどの危険性のある製品を他の製品と混同しないように、きちんと区別しています。この点は評価できると思います。
もうひとつの懸念は、パック型入浴剤では、多くの水素ガスを発生しすぎることです。こんなに大量の水素ガスを発生させても、水には溶けないで風呂のお湯の外にでてしまうだけです。お風呂のなかで洗面器などに水素ガスを貯めて火をつけて遊ぶようなことがないかと心配です。水素ガスは4%以上になると爆発しますので、水素は多ければ多いほどよいというわけではありません。
ついでにと言っては語弊があるかもしれませんが、4年ほど前に、この製品(パック型入浴剤)が販売されたときに、ある研究会の休憩時間に参加者とコーヒーを飲みながら懇談する機会があり「そのパック型水素発生は、かなり高温になるのでやけどに注意する必要がある。私はお薦めしません。」という旨の話をしたことがあります。すると、それを録音しておいて「営業妨害だ。私は、あの手の人と知り合いが多いので、身辺には十分ご注意を!」という脅迫状まがいのメールを製造元の会社社長が送ってきました。困ったものです。この製品を販売している全部の会社というわけではありませんが、??と思われる会社が混じっています。
なお、TBSテレビでやけどの危険性のあるパック型水素発生剤を販売している会社のひとつは、分子状水素医学生物学会(太田成男理事長)の賛助会員となっていました。当会の賛助会員は1年制で、様子を見ながら1年毎の更新を認める方法となっています。が、今年の5月には諸般の事情で賛助会員の延長を認めませんでしたので、現在は賛助会員ではありません。また、私の写真と名前を宣伝に使っている会社がありますが、無断使用で私とは関係ありません。
水素化マグネシウムは化粧品素材としても承認されており、適正な量の水素を発生し発熱もしないので入浴化粧料として安全です。ちゃんとした製品と、そうでない製品を見分けながら、水素の効果を実感していただきたいと思います。


水素ガスはOKでも、水素水はダメ?? 水素の有効濃度のお話


 水素水をめぐる議論に、「水素ガスの吸引効果は理解できるが、水素水の飲用効果はありえない」という意見があります。「水素ガスを吸うなら大量の水素を摂取できるが、水素水からは微量の水素しか摂取できないはずだ」というのが理由のようです。
 こういう議論では、単なる印象ではなく、実測や計算が大切です。
 吸引させた時の水素ガスの有効濃度は1%(volume/volume)以上であることが動物実験でわかっています。最近の臨床試験では、1.3%、2%、3%(volume/volume)の濃度の水素ガスを吸引させており、動物実験の結果とよく一致しています。水素の飽和濃度が800μMなので、そのときの体内濃度は、10〜24μMとなるはずです。別の単位で表すと0.02〜0.048 ppm(weight/weight) (1リットルあたり20μg〜48μg)です。
 では、水素水を飲んだときの体内濃度はどうなるでしょう?これは、人体実験をするわけにはいかないので、ラットを使います。15mL/kgの飽和水素水を飲ませた場合の結果を見てみます。これは、体重40kgの人に600mLの水素水を飲ませた量に対応しますので、極端に多く飲ませた訳ではありません。測定結果では、水素濃度は肝臓で20μMに達することは実測されています。別の単位で表すと0.040 ppm(weight/weight) (1リットルあたり40μg)です。この濃度は、2%の水素ガスを吸わせたときの水素濃度とほぼ一致します。
Molecular hydrogen improves obesity and diabetes by inducing hepatic FGF21 and stimulating energy metabolism in db/db mice. Obesity (Silver Spring). 2011;19:1396-1403.のFigure 1
 つまり、水素ガスを吸わせた時と、水素水を飲んだときでは、臓器へ到達する水素濃度はあまり違わないのです。
 「腸内細菌が発生する水素よりも水素水を飲む方が効果的」 http://shigeo-ohta.com/topics120/
に説明しましたように、水素の効果は、水素の摂取量ではなくで、水素濃度の変化が重要です。
 つまり、水素水の水素でも十分効果を発揮できるはずだということになります。もちろん、水素ガスの吸引と水素水の飲用による体内動態は全く同じだという訳ではありませんが、基本的には同じように考えてよいのではないかと思っています。


国立健康栄養研究所の「『健康食品』の素材情報データベース」に取り上げられた「水素水」


 最近、国立健康栄養研究所の「健康食品」の素材情報データベースに水素水がとりあげられ、マスコミでも紹介されました。私のところにも一般の方々から質問がよせられていますので、このブログにも私の見解を記しておきます。
 じつは、6月29日に国立健康栄養研究所を訪れ、いろいろな話を聞いてきました。所長を含め4名の担当者が2時間ほど特別待遇で親切に対応していただきました。まず、感謝したいと思います。
 このデータベースでは、まず、水素水の定義をしています。「水素水とは、水素分子(水素ガス)の濃度を高めた水である。」とし、「水素水の調製法としては、(1)加圧下で水素ガスを水に充填する方法、(2)マグネシウムと水、あるいはアルミニウムと酸化カルシウムと水の化学反応により水素分子を発生させて溶存する水素分子濃度を高める方法、(3)水の電気分解により陰極側に発生した水素分子が豊富な水を利用する方法がある。電気分解により調製された水は、還元水素水、アルカリイオン水、電解水素水などと呼称されることがある。」としています。今まで、公的機関で、水素水の定義をしたところがなかったので、これからは、この定義を使う事になると思います。この点については評価し、御礼を申し上げてきました。
 有効性については、「ヒトでの有効性について信頼できる十分なデータが見当たらない。現時点における水素水のヒトにおける有効性や安全性の検討は、ほとんどが疾病を有する患者を対象に実施された予備的研究であり、それらの研究結果が市販の多様な水素水の製品を摂取した時の有効性を示す根拠になるとはいえない。」と書かれています。「信頼できる十分なデータが見当たらない。」というのは、このデータベースでの常套句ですので、特に水素水に関してだけデータがないというわけではありません。すでに信頼できる十分なデータがあるなら、研究する必要はないわけですから、納得できる表現です。
 しかし、一部マスコミでは「信頼できる十分なデータが見当たらない。」を「信頼できるデータが見当たらない。」「データが見当たらない。」として紹介しているところもあります。この点は大いなる誤解をあたえますので、この点を指摘すると、このデータをマスコミが使う事を許諾したかどうかは「答えない」との慎重な姿勢でした。一部マスコミのように、この内容を正確に伝えないで、意図的に水素水の悪口を言うだけの目的に利用される危険性がありますが、マスコミに正確に伝えてくれというのは、無理なことだとあきらめているとのことでした。「マスコミとは太田先生が喧嘩してください、当研究所は関与しません」とのことでした。
 安全性についての、「信頼できる十分な情報が見当たらない。」としていましたので、安全性に関するデータをいくつか指摘してきました。しかし、「そのデータは水素であって水素水ではない」とのこと。「水が安全で、水素も安全で、お互いに反応しないのだから、水素水も安全だと言ってもよいのではないか?」(太田)との問いには、「水は安全だとしても、一般の方はせいぜい2リットルくらいしか水は飲まない。しかし、水素水が健康にいいと思うと、4リットルも5リットルも飲もうとする人がでてくる。多くの被験者で水素水4リットルを何日も飲んで安全だというデータがない限り、安全だとは言えない。」との答えでした。1日4リットル飲ませる臨床試験については、倫理審査委員会で承認されることはないでしょうから、そのような試験はできません。
 また、水の安全性については、「水素水の製造工場では、食品工場として保健所が立ち入り、水の安全性を担保しているのだから、水素水の水自体の安全性については担保してもよいのではないか?」(太田)の問いには、「日本で流通している水素水を製造している工場を100%リストアップして所轄の保健所を100%リストアップして、そのすべての保健所から、使っている水は安全だと言うリポートをいただければ納得します。」という答えで、「もし、ひとつでも保健所の目をすり抜けて、安全でない水を使っている工場が一つでもあれば、水素水に使っている水も安全とは言えない。」という立場でした。もちろん、この要求に答えるのは不可能です。安全だと言い切るのは、不可能ということです。
 なお、水素水を1日1.5リットル〜2リットル飲んで、体調不良の訴えがあった件については、「マグネシウムスティックにより水素を発生させた水素水」と限定して正確に記載してあります。
 「有効性についても、データが揃いつつあるので、データがそろえば、今後は、有効性・効果・効能について記載するのか?」の問い(太田)には、「有効だという何らかの記載をすると、悪徳業者は、それを利用するだろう。悪徳業者を利して、消費者に不利益がでるようなことはできない。現状では、悪徳業者がいるので、水素水についての有効性については書けない状態だと認識している。」とのことでした。
 基本的な姿勢としては、「この素材情報エータベースは、消費者が有害な物質を摂取して健康被害が起きないように、また、効果がないものに妄信的に頼って通常の治療ができなくなることを防ぐことを目的としているので、医学情報とは違うスタンスで作っている。」とのことで、それはそれで、納得できる説明でした。
 一部だけの文言だけでなく、全体を見渡して、この情報を正確に利用することをさらに啓発していただきたいと思いました。


水素の農業への応用研究が進む


 水素の医学的応用を目指した研究が進んでいます。驚いたことに、水素は植物に対しても効果的なのです。水素水で生育させると塩害や害虫にも耐性になりますし、農産物の品質も向上するとのことです。今考えれば、水素は生命の基本的な部分に働きかけるのですから、植物に対して効果があったとしても、当然のことかもしれません。動物だけでなく植物も生物です。そのへんの事情は以下の総説に掲載されていますので、参照してください。
 Progress in the study of biological effects of hydrogen on higher plants and its promising application in agriculture(Medical Gas Research 20144:15) (http://medicalgasresearch.biomedcentral.com/articles/10.1186/2045-9912-4-15) Open accessなので無料で誰でも読めます。

 ところで、日本でも水素を使った農業が始まっています。
 平成28年度の農林水産省の「 農業界と経済界の連携による先端モデル農 業確立実証事業 」における連携プロジェクトには、「電解水素水で野菜の収量、機能性を向上させる手法を確立」が採択されました。
 団体名は、「電解水素水を活用した還元野菜プロジェクトコンソーシアム」農業界の代表者は、(株)農業生産法人南国 スタイル。経済界の代表者は、(株)日本トリム です。
 プロジェクト課題は、「医療分野において、抗酸化性等の機能性に着目されている電解水素水を、施設園芸における潅水等に導入することで、野菜の収量や機能性を高める生産方法を確立し、収益の向上を図る」。
 いよいよ政府機関の支援のもと、水素の農業への貢献がはじまろうとしているのです。
 なお、(株)日本トリムは、農業分野だけでなく、医学領域では血液透析に水素を応用しようとする研究を長年進めており、血液透析中の酸化ストレスを緩解しうることを示しています。


科学的真実と社会的運用法


 科学的真実は、人間社会の都合で変えることはできない。例えば、地球の自転速度を人間社会の都合で変えることはできない。しかし、社会的運用によって時刻を変えることは可能である。米国のように一つの国でも地域毎に時刻をかえることもできるし、ヨーロッパのように夏時間と冬時間を設定する事も可能である。
 最近の水素水に関する議論では、科学的真実と社会的運用法を区別して議論せずに、混乱が生じているところがあるので、整理してみよう。
 科学的真実に関しては、水素ガスの吸引および水素水飲用によるモデル実験動物に対する効果は、多方面から立証され、水素の多機能性効果は、動かす事ができない科学的真実の領域に達している。メカニズムについては、基本的な部分は解明されてはいるが、すべてが解明されたとは思わない。しかし、メカニズムに不明の部分が残されているからといって、効果自体を否定する事はできない。
 科学的真実は不変であるので、社会的な理由によって、あるときは正統的な科学になり、あるときはニセ科学になるということはありえないし、社会的な要請によって、科学的真実が変えられたり、歪められることがあってはならない。
 社会的に応用するときは、人間を対象とする研究成果が必要である。基礎医学の研究者である私は、人間を対象とする研究は真実の探求というよりは実用化(応用)へのステップとして捉えている(異論はあるかもしれませんが・・・)。
 次に、この科学的真実を社会へ応用する場合には、科学的真実を基盤として、同時に社会的運用法のルールを守らなくてはならない。
 少なくとも我が国の法律(薬機法)では、商品の販売者が効果効能を標榜して販売するためには、医薬品として公に承認されることが必要である。医薬品として承認されるためには、その手順が決められているので、いくら効果効能がある場合でも、その手順を踏まなくては、医薬品として承認されず、販売者が効果効能を標榜することはできない。逆に、医薬品として承認される手順まで至っていない、または経済的理由によってその手順を踏めないからといって、科学的真実の効果効能自体が否定されるわけではない。同時に、第三者が科学的真実について議論するのは自由である。また、第三者の女優さんが自分の体験を話すのは法律的には問題ない。
 健康食品(特定保険用食品や機能性表示食品)の場合も、同様である。水素ガスや水素水が健康な人(疾病に罹患していない人)に対して効果があるという研究結果があるからといって、販売者が手順を踏まずに効果効能を示唆して販売してはならない。また、その手順がないからといって、科学的真実を否定することはできない。
 水素は、既存食品添加物として承認されており、承認した当事の厚生労働省局長の言によれば、「水素水は食品として販売することには何ら問題はない」。
 現段階は、水素ガスと水素水は、医薬品としても健康食品としても公に承認されていないので、水素商品の販売者が効果効能を標榜する、または示唆して販売することはできない。
 私が水素の効果を肯定するのは科学的真実の議論であり、販売者は水素の効果を標榜して販売してはならないというのは、社会的運用のルールを遵守すべきであるという当たり前のことである。
 近い将来には、水素ガスと水素ガス発生器は、医薬品と医療器具として承認され治療に貢献する、水素水は機能性表示食品として、疾病のリスク軽減に貢献する、という道筋が望ましいのではないかと考えている。