Monthly Archives: 9月 2016

水素水の有効性の評価は実は悪くない:国立健康栄養研究所の評定を見て


 以前、国立健康栄養研究所の有効性データベースについて、私見を述べました。(topics123)国立健康栄養研究所の「『健康食品』の素材情報データベース」に取り上げられた「水素水」(2016.7.9)では、水素水について「信頼できる十分なデータが見当たらない。」というのは、このデータベースでの常套句ですので、特に水素水に関してだけデータがないというわけではありません。と記しました。
 他の成分について注意深く読むと、常套句についても、評価の善し悪しによって、少しずつ書き方が違っていますので、整理してみます。
 医薬品として承認されているタウリンでは、「タウリン摂取によりうっ血性心不全および肝炎に対して一部で有効性が示唆されているが、その他の有効性については十分な情報が見当たらない。」のように「有効性が示唆」と掲載させています。
 カテキンやDHAのように特保として承認されているものは「関与成分とした特定保健用食品が許可されている。」と掲載されています。
 医薬品でも特保でもない成分については、よく見ると少しずつ書き方を変えています。それを、私流にランク付けしてみます。
Aランク:ヒトでの有効性については、信頼できる十分なデータが見当たらない。
Bランク:ヒトでの有効性については、信頼できるデータが十分で(は)ない。または、十分にはない。
Cランク:ヒトでの有効性については、信頼できるデータが(は)見当たらない。
Dランク:ヒトでの有効性については、十分な情報が見当たらない。
Eランク:ヒトでの有効性については、情報は見当たらない。
 具体的に見れば、例えば、スッポンは、Eランク;トマトは、Dランク;N—アセチルグルコサミンは、Cランク;クルクミン(カレーの成分)、シジミ、黒酢、ラクトフェリンは、Bランクです。それらに比べると、水素水はAランクです。さらに、「現時点における水素水のヒトにおける有効性や安全性の検討は、ほとんどが疾病を有する患者を対象に実施された予備的研究であり、それらの研究結果が市販の多様な水素水の製品を摂取した時の有効性を示す根拠になるとはいえない。」と書き加えられていますから、Aランク+αとも読み取れます。
 私は、スッポン、シジミ、トマトなどは、健康に良いと思っていますので、それらと比べると水素水は有効と評価されているのが現段階です。
 水素水について「信頼できる十分なデータが見当たらない。」を「信頼できるデータが見当たらない。」や「データがない。」と間違ってはいけません。
 また、「現段階では」という但し書きを加えないといけない段階ですので、将来的には、「○○には有効」や「○○に関しては特定保健用食品が許可されている」としていかなくてはならないと考えています。


水素医学論文全体の数と質


 水素医学関連の論文は多くなってきて、だんだん正確に把握するのが難しくなっていますが、原著論文は500をゆうに超えたと思われます。
 論文の質は一概にいうのが難しいのですが、どれだけ影響を与えたかという指標として引用数があげられます。私がNature Medicineに発表した論文の引用数は、現在613 (Scopusによる)です。新しい分野を切り開いた論文としては9年間で613は例外的に極めて多い引用数でノーベル賞クラスと言われます。
 水素医学の論文の全体の平均の質の指標は、発表された学術誌のImpact Factorで表すことができます。大雑把に言えば、学術誌全体の2年間の引用数を発表論文数で割った数値です。中部大学の市原教授によると水素医学の最初の320報のImpact Factor平均は3.5だそうです。
 Impact Factor平均が3.5と言われても専門外の方はピンと来ないと思いますので日本で発行されている学術誌と比較してみます。日本で発行されている英文雑誌のうちImpact Factorが算定されているのは、246誌で、上から8番目はCANCER SCIENCEでImpact Factor は3.896 、上から9番目はSCIENCE AND TECHNOLOGY OF ADVANCED MATERIALSで Impact Factorは 3.433。Impact Factor3.5は、日本で発行されている英文学術誌で、Impact Factorがついている雑誌の上位3−4%にあたるということになります。ちなみに全世界の20万誌のうち、Impact Factorがでているのは11698誌で、5%にしかすぎませんhttp://the.nacos.com/pdf/impactfactor.pdf 参照)。この数字をあてはめると、水素医学論文の平均は、日本の学術誌の上位0.15-0.2%ということになります。
 私自身、この平均Impact Factor3.5を聞いて、この多さに正直驚いたくらいですから、かなり質の高い信頼性のある英文論文が多数出されていると言えます。


心肺停止の患者さんへの水素ガス吸引治療の研究論文が発表されました。


 もう1ヶ月になりましたが、5人の心肺停止患者さんへ水素ガスを吸引させた結果の論文が発表されました。論文の題名は、Feasibility and Safety of Hydrogen Gas Inhalation for Post-Cardiac Arrest Syndrome: First-in-Human Pilot Study(心肺停止患者の蘇生時に水素ガスの吸入させる治療の実現可能性と安全性:人を対象にした最初の予備的研究)。私も共著者のひとりですが、慶応義塾大学が中心となった研究です。
 この研究では、5人中4人が90日後で「意識は清明、普通の生活ができ、労働が可能である。」という結果がでました。一般には、心肺停止後は命を取り留めても大部分の方は社会復帰が難しいので驚くべき結果です。救急医療においては、命を護るだけでなく、普通の生活ができるようにと社会復帰を目指します。
 この論文では、論文の題目にもあるように、実際にこの手順で患者さんへ水素ガス吸引治療が可能なのか、また安全であるかを調べることが目的なので、水素ガスの効果があったことは結論していません。この研究では心肺停止患者さんへの最初の水素ガス治療なので、患者さんの選択の段階でバイアスがかかった可能性があるからです。
 2月20日の13時のNHKニュースで、本格的な水素ガス吸引治療研究が始まるニュースが流れたように、全国12の医療機関で心肺停止患者への水素ガス治療がはじまっています(本格的な心肺停止患者への水素ガス吸引治験が始まります 参照)。
 実際に水素が治療に使われるようになるには、手順を確かめ、安全性を確認しながら一歩一歩着実に進んでいくことが大切なのです。


臨床研究への参加者の数と信頼性


 最近の水素水の臨床研究の結果に対して、「参加者が数十人のごく小規模で信頼性が著しく低い試験結果でしかありません」と論評する人たちがいます。専門家が審査して学術論文として発表された結果に対して「著しく信頼性が低い」などというのもたいへん失礼な話だとは思いますが、本来は、信頼性は参加者の人数よりも、研究のデザインによるものですが、あまりに専門的になりすぎるので、ここでは参加者の数と信頼性の関係にしぼって話をしたいと思います。
 臨床試験では、対象者ひとりひとりの体質も生活も違いますので、全員が同じ結果になるとは限りません。遺伝的純系の動物でも一匹一匹に個性があります。同じ水素水を同じだけ飲んでも同じ結果がでるとは限らないのです。そこで、その違いを考慮したうえで、その結果はどのくらい確かなのか、つまり偶然ではないかを判断することになります。一般に95%の確率で確かだという場合には、統計的に意味のある結果だと判断することが多いのです。統計的にP値(probability value)が0.05以下になると一般的には統計的に有意と言います。95%の確かさ(P=0.05)という場合には、効果がなくても5%の確率で偶然に効果があるかのような結果が生じることがあるという意味です。
 あまり効果がない場合は少人数を調べてもP値は小さくならないので、多くの人を対象にして統計的な計算をしなくてはなりません。逆に、効果が顕著である場合には、臨床研究への参加者が少なくても、P値は小さくなります。人数が少なくても、統計的に有意な結果がでた場合は、その効果が顕著であることを意味します。
 では、どのくらいの人数を必要とするのでしょうか?特に最初の研究(パイロット研究)では、多くの方を対象としても無駄になることもあるので、実際に効果がある場合にP値が0.05より小さくなる最小限の人数を計算します。例えば、パーキンソン病に対する水素水の効果の研究では、UPDRS scores で効果ありとP値が0.05よりも小さくなるためには、最小限の人数は8人と計算され、途中でひとり脱落することを考えて9人を対象としています(We calculated that the enrollment of a minimum of 8 participants would be required to detect a 5% difference in the change of UPDRS scores between the 2 groups, with a standard deviation of the mean difference of 3.5% at a 2-sided α level of 0.05 and 80%. Assuming 1 dropout, a total of 9 patients was required.)。最小限での人数を対象とした水素水の研究でP<0.05となったということは、水素水には顕著な結果があることを意味します。ただし、数%の確率で、実は効果がなかったということもありうるので、今度はもっと多くの人数を対象として研究に移行することになります。


厚生労働省副大臣との面談:水素水は病気の予防に貢献すべし


 先日(7月27日)、厚生労働省にて、水素水の将来について、副大臣からご意見を頂戴する機会に恵まれました。益々、水素の治療効果や予防効果が明確になっており、その利用にあたっての法律的な問題や現制度との整合性などもクリアにしておかなければならないと考えたからでした。副大臣は、お忙しい中、あらかじめ水素水についてよく調べておられ、資料も準備されており、ご意見は非常に明確でした。
 まず、水素水は健康食品として、病気の予防に貢献すべきという意見でした。むしろ、効果効能を標榜できる医薬品にしてしまうと健康保険財政を圧迫することになりかねないので、せっかく作った機能性表示制度を利用すべき、というお考えでした。これからは、政府としても病気の予防に力を注がなくてはならないとの考えで、水素ガスは救急医療の医薬品、水素水は慢性疾患予防のための機能性表示食品という私の考えと一致するもので、非常に心強く感じました。
 また、現在、副大臣のライフワークとして、健康・医療の町づくりにとりくんでいるので、このような公の取り組みの中に入り込むことによって、水素水の権威づけをしたらどうかとの具体的な提案もしていただきました。
 現在進められている健康医療モデル都市には、東京にある健康・栄養研究所の移転も含まれているそうで、先日、私も健康・栄養研究所へ行ってきたことを話しました。「国立研究所も、あれが駄目、これが駄目というネガティブ思考ではなく、これがいい、あれがいいというポジティブ思考で、企業の後押しをするくらいの事をやってほしい。研究所も意識改革をしないと生き残れない。」との意見をいただきました。これも全くの同感です。
 水素水が社会にどのように貢献したらよいかが明確になった一日でした。お忙しいところ、時間をとっていただきありがとうございました。
(注:機能性表示は特定の疾病の予防を表示するものではありませんが、結果的に病気の予防に貢献するという意味で使っています。)