科学的真実と社会的運用法

By | 2016年7月6日

 科学的真実は、人間社会の都合で変えることはできない。例えば、地球の自転速度を人間社会の都合で変えることはできない。しかし、社会的運用によって時刻を変えることは可能である。米国のように一つの国でも地域毎に時刻をかえることもできるし、ヨーロッパのように夏時間と冬時間を設定する事も可能である。
 最近の水素水に関する議論では、科学的真実と社会的運用法を区別して議論せずに、混乱が生じているところがあるので、整理してみよう。
 科学的真実に関しては、水素ガスの吸引および水素水飲用によるモデル実験動物に対する効果は、多方面から立証され、水素の多機能性効果は、動かす事ができない科学的真実の領域に達している。メカニズムについては、基本的な部分は解明されてはいるが、すべてが解明されたとは思わない。しかし、メカニズムに不明の部分が残されているからといって、効果自体を否定する事はできない。
 科学的真実は不変であるので、社会的な理由によって、あるときは正統的な科学になり、あるときはニセ科学になるということはありえないし、社会的な要請によって、科学的真実が変えられたり、歪められることがあってはならない。
 社会的に応用するときは、人間を対象とする研究成果が必要である。基礎医学の研究者である私は、人間を対象とする研究は真実の探求というよりは実用化(応用)へのステップとして捉えている(異論はあるかもしれませんが・・・)。
 次に、この科学的真実を社会へ応用する場合には、科学的真実を基盤として、同時に社会的運用法のルールを守らなくてはならない。
 少なくとも我が国の法律(薬機法)では、商品の販売者が効果効能を標榜して販売するためには、医薬品として公に承認されることが必要である。医薬品として承認されるためには、その手順が決められているので、いくら効果効能がある場合でも、その手順を踏まなくては、医薬品として承認されず、販売者が効果効能を標榜することはできない。逆に、医薬品として承認される手順まで至っていない、または経済的理由によってその手順を踏めないからといって、科学的真実の効果効能自体が否定されるわけではない。同時に、第三者が科学的真実について議論するのは自由である。また、第三者の女優さんが自分の体験を話すのは法律的には問題ない。
 健康食品(特定保険用食品や機能性表示食品)の場合も、同様である。水素ガスや水素水が健康な人(疾病に罹患していない人)に対して効果があるという研究結果があるからといって、販売者が手順を踏まずに効果効能を示唆して販売してはならない。また、その手順がないからといって、科学的真実を否定することはできない。
 水素は、既存食品添加物として承認されており、承認した当事の厚生労働省局長の言によれば、「水素水は食品として販売することには何ら問題はない」。
 現段階は、水素ガスと水素水は、医薬品としても健康食品としても公に承認されていないので、水素商品の販売者が効果効能を標榜する、または示唆して販売することはできない。
 私が水素の効果を肯定するのは科学的真実の議論であり、販売者は水素の効果を標榜して販売してはならないというのは、社会的運用のルールを遵守すべきであるという当たり前のことである。
 近い将来には、水素ガスと水素ガス発生器は、医薬品と医療器具として承認され治療に貢献する、水素水は機能性表示食品として、疾病のリスク軽減に貢献する、という道筋が望ましいのではないかと考えている。