大隅良典先生、ノーベル賞受賞おめでとうございます:独創的研究の原点

By | 2016年10月15日

 大隅先生はノーベル賞受賞時に、「誰もやっていないことをやろう。」と思い、現在の研究テーマを設定したとおっしゃっていました。
 「水素研究における独創性」では、私が「生化学若い研究者の会」の事務局長を務めたことがあること、それが現在の独創的な研究につながったことを話しました。大隅先生も、「生化学若い研究者の会」のOBメンバーで、独創性・オリジナリティーについて、何度も話をされています。
 30年くらい前、大隅先生が、ちょうど現在のオートファジーの研究をはじめたころに、長野県の蓼科高原で開催した「生化学若い研究者の会の夏の学校」のパネルディスカッション「独創性、オリジナリティとは何か」で講演されたことを思い出します。その他のパネリストは、郷通子さん(元お茶の水大学学長)と山本雅さん(元東大教授)で、このお二人は、すでに著名な研究業績を挙げておられました。特に、山本さんは、「がん」を専門にしていましたので、競争の激しい分野でしたから、「競争の激しい分野であるからこそ、他の人にない独創性が必要なのだ。」とお話されていました。郷先生は、カーリーヘアにしたら、周りが違って見えて、新しい発想ができたと話されました。大隅先生は、他の二人に比べれば、新しいテーマを始めようとしていたころで、まだ論文も出ていない状況でした。しかし、「大切なのは、人のやらないことをやろうという精神ではないか、流行を追わない精神が大切」とお話しになられたのを記憶しています。
 2008年の生化学会大会期間中に開催された、「生化学若い研究者の会創立50周年記念シンポジウム」では、大隅先生は、生化学若い研究者の会は、大変な財産だった、と最初にお話しになりました。めちゃくちゃ自発的な会で、修士1年から博士課程修了まで皆勤なさったとのことです。分子生物学の興隆期で、それほど権威が見えない、自由な雰囲気の時代だった、交流の実が見える時代だった、貧しいが夢のある時代だった、と振り返られました(日経バイオテク https://bio.nikkeibp.co.jp/article/bc/0020/0141/)。
 2010年に、夏の学校50回記念の夏の学校にOBとしてシンポジウムに招かれて、私も後輩に向かって話をしたのですが、その時のテーマもやはり「情報過多な時代のオリジナルな研究とは?」でした。「当時と現在での研究の進め方がどのように変わってきたか?日本発の研究を如何に創成していくか?国際的研究者になるには?」などが議論のテーマでした。
 このような空論みたいな議論が何になるのだろう?役に立つのだろうか?と思った事もありますが、若いときの議論が実際の研究の際、特に苦しいと思えたときには、生きてくるものなのでしょう。
 今年の3月に大隅先生とお会いしたときに、「水素研究はどうなってる?」「大化けしそうだね。」と励ましの言葉をいただき、「わかる人には、ちゃんとわかる。」と心強い思いをしました。

 大隅萬里子夫人には、私の先生である吉田賢右先生の奥様の妹さんということもあってか、お世話になりました。35年くらい前、私が前橋に住んでいた頃、当時夜遅くまで一緒に飲んでいて、終電に間に合わなくなってしまったことがあります。そのときは、真夜中に自宅へ連れていっていただいて、泊めていただきました。現在も、学生や若い研究者を自宅に泊めておられると聞いています。