新型コロナウイルスへの対策としての水素の利用(その10)
新型コロナウイルスの感染によって、血栓ができやすいことが注目されています。このブログの「新型コロナウイルスへの対策としての水素の利用(その4)」では、新型コロナウイルスによる血栓を水素ガスが軽減する可能性について解説しました。
水素が炎症によって生じた血栓を抑制するメカニズムは明らかになってきました。ここでは、メカニズムの説明をしたいと思いますが、やや専門的な話になってしまいますが、おつきあい願います。
血栓がつくられる過程は複雑ですが、最初に血液の中の血小板が活性化されて粘りやすくなって凝集するところから始まります。
免疫には2種類あって、初めて出会う異物を除外しようとするのが自然免疫です。以前に出会った経験がある異物を排除しようとするのが獲得免疫です。この獲得免疫は、前に出会ったことのある異物に対する抗体を作り出し、潜入した異物へ攻撃する役割をはたしています。自然免疫では、細胞の表面にTLR4やその他の受容体があって、はじめて出会う異物をTLR4などが認識してくれます。そのTLR4は、血小板の表面にも存在し、異物がきたときに働きます。TLR4だけではなく、血小板にはCD36という酸化物を受け入れる表面タンパク質があります。血液の中のコレステロール(LDL)が酸化されると、血小板は、CD36やTKR4を通じて酸化LDLを異物として認識します。そして、酸化LDLは異物として認識され、血小板を活性化し、血栓の形成が始まります。
ところが、水素があると酸化LDLの性質が変化しまい、TLR4やCD36に強く結合します。ここでは、水素変換酸化LDLと呼ぶことにします。水素変換酸化LDLがCD36やTLR4に結合すると、酸化LDLはTLR4やCD36に結合できなくなって、血小板の活性化ができなくなります。このようなステップをへて、水素が血小板の活性化を抑制して、血栓の形成を阻害することになると考えられます。
血栓は傷ができたときに出血を止めるために需要な役割をはたしています。ここで、水素が血栓をできにくくするとなると、傷ができたときに血が止まらなくなってしまうと心配されるかもしれません。
ここが、水素が優れたところです。通常は、活性酸素が少ないために水素変換酸化LDLはできません。活性酸素が脂質を連鎖反応によって酸化するときだけに、水素変換酸化LDLができるのです。つまり、通常時には、水素が血栓の形成を阻害することはなく、異常事態が生じたときにだけ、つまり活性酸素が多く出現したときにだけ、水素は血栓の形成を阻害します。