水素ガスが新型コロナ血栓を抑制してくれるわけ(その2)

投稿者: | 2020年5月21日

新型コロナウイルスへの対策としての水素の利用(その11)

新型コロナウイルスの感染によって、血栓ができやすいことが注目されています。このブログの「新型コロナウイルスへの対策としての水素の利用(その4)」では、新型コロナウイルスによる血栓を水素ガスが軽減する可能性について解説しました。その10では、血栓のでき方のメカニズムと水素の関係を説明しました。しかし、実は、水素が血栓の形成を抑制できる理由はひとつではないのです。

まず、血管の内部構造を見てみましょう。電子顕微鏡で血管の内部を見ると、密生したヒゲのように見えるグリコカリクス(glycocayx)と呼ばれる構造体があります(写真と模式図)。この構造体の中には、ヘパラン硫酸と呼ばれる糖の一種があって、血栓の形成を調節する因子が結合することが知られています。ところが、このグリコカリクスは炎症などの刺激があると血管から剥がれやすくなり、剥がれると血栓ができやすくなります。
今年になって、水素がグリコカリクスを保護するという論文が浜松大学から発表されました(2)。もうひとつの論文が慶応義塾大学からでるはずで、ちょうど印刷中です(3)。
このグリコカリクスは、血管の表面を護ってくれています。水素はグリコカリクスが血管から剥がれることを防ぎますので、新型コロナ血栓の害から私たちを護ってくれると期待されます。

写真と図の出典は、ここ。https://search.yahoo.co.jp/image/search?p=glycocalyx&ei=UTF-8&ts=1876&aq=-1&ai=O6boKlr.QDOvhvjDpZY68A&fr=top_ga1_sa#mode%3Ddetail%26index%3D8%26st%3D0

論文:
(1)射場敏明:グリコカリクスが関与する血管内腔の抗血栓性とその障害。血栓止血誌。2016; 27(4): 444-449.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsth/27/4/27_444/_pdf
(2)1.2% Hydrogen gas inhalation protects the endothelial glycocalyx during hemorrhagic shock: a prospective laboratory study in rats.
Sato T, Mimuro S, Katoh T.et al. J Anesth. 2020 Apr;34(2):268-275.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31997005/?from_term=hydrogen+glycocalyx&from_pos=6
(3)Tamura T, Sano M, Matsuoka T, et al. Hydrogen gas inhalation attenuates endothelial glycocalyx damage and stabilizes hemodynamics in a rat hemorrhagic shock model. Shock. 2020; in press.