食品の放射性汚染の目安: 暫定基準値よりも自分なりの基準を持とう

By | 2011年11月16日

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お米の収穫期になりました。福島県の会津地方で収穫した稲穂には放射性物質が検出されなかったことで一安心です。

放射能には色も臭いもありませんし、放射線をあびたからといって痛さを感じるわけでもありません。私たちは五感によって放射線を感じることができないのです。得体のしれないものに対して、怖さを感じるのは当然のことです。でも、放射線は測定器によって測ることができます。そこで、放射線を正しく測定して、正しく知らせる・正しく知ることがなにより大切で、それが前提となります。

1.自分なりの基準を持とう

放射線の強さはシーベルト、放射性物質の多さはベクレルであらわされます。でも、◯◯シーベルトやXXベクレルと言われても多いのか少ないのか、危険なのか危険でないのか、わからなければ意味のない数字になってしまいます。
放射性物質には規制の基準として暫定基準値が今年の福島原発事故のあとに急遽決められましたが、困ったことに何を基準に決められたのかきちんとした説明がないので、この暫定基準値を超えると危険なのか、それとも大丈夫なのか、わからない状態になっています。
そこで、自分なりの基準を持つことが必要です。そのために、自然放射能と他のがんの要因と比較してみましょう。

2.外部被曝の自然放射能:宇宙から大地から

地球上では平均すると、宇宙からも大地からも、それぞれ年間0.39ミリシーベルト、0.48ミリシーベルトの放射線が注がれています。微量の放射線でも避けたいと思ってもそれは地球上で生きているかぎり無理なことなのです。
大地からの放射線の強さは地域によって違いがあって、世界には放射線の強い地域があり、そこにも多くの方が住んでいます。中国の陽江県年間3.5ミリシーベルト、インドのケララ州3.8ミリシーベルト、イランのサムール10.2ミリシーベルト、ブラジルのガラパリ5.5ミリシーベルトです。これらの数値は、地域の平均です。日本では大地からの放射線は比較的低く0.43ミリシーベルトです。
このように放射線が強い地域もあるのですが、発がんの頻度が多いことはなく、むしろ近くの地域に比べて、長寿の傾向にあります。 高地ですと宇宙からくる放射線が強くなり、飛行機に乗ると多くの放射線をあびることになります。このことから考えると、余分に年間10ミリシーベルトをあびても健康に悪影響があるとは考えられません。

3.内部被曝の自然放射能:空気から食べ物から:10,000ベクレル食べると0.13ミリシーベルト

空気中にも放射性気体ラドンがあり、それを吸って年間1.26ミリシーベルトの放射線をあびています。国内でも、ラドン温泉やラジウム温泉では、ラドンの放射線が強いのですが、例えば三朝温泉地域では発がん率がずっと低くなっています。

また、食物にも放射性物質が含まれており体内、の放射性物質を合計すると年間0.29ミリシーベルトの放射線をあびています。60kgの体重の方ですと、皆さん7,000ベクレルの放射性物資を必然的に内部に持っています。これは、核実験がなくても、原発事故がなくても自然界から必然的に摂取して体内に留まる量です。まず、自分たちが7,000ベクレルの放射性物質をもっているということを前提として、汚染した放射性物質の状況を考えれば感覚的に理解できるのではないかと思います。

内部被曝と外部被曝を合計すると、日本の平均は1.5ミリシーベルト、米国では3.0ミリシーベルト、世界の平均では2.4ミリシーベルトです。
放射線量と放射線物質の関係ですが、放射性セシウムの場合一度に10,000ベクレル食べると0.13ミリシーベルトの放射線を余分にうけることに対応します。ですから、年間10万ベクレル(一日270ベクレル)の放射性物質を日本で食べても、米国での生活よりも放射線をあびる合計量は少ないのです。

4.放射性物質はいつまでも体内には留まらない

内部被曝は怖いと主張される方がいます。そのときに、持ち出されるのがα線の被害です。放射線にはそれぞれ性質が違う種類があって、たしかに内部被曝で怖いのはα線です。しかし、放射性セシウムはα線を出しません。また、放射性ヨウ素もα線をだしません。
放射性セシウムの半減期は30年です。そのため放射性セシウムが一度体内に入ると30年間も体内に留まってしまうと誤解される方がたくさんいらっしゃいます。10歳の子供が放射性セシウムをとったら、それが半分になるのは40歳だと言うわけではないのです。セシウムは、水によく溶ける物質で、乳児なら10日、10歳の子供なら1ヶ月、大人なら70日で半分になります。10歳の子供が放射性セシウムを食べても、1年後には4000分の1になります。乳児や子供は放射線の影響も大きいのですが、排出する速度も速いのです。
放射性セシウムは、筋肉に「蓄積する」と言われることが多いのですが、蓄積するわけではなく、細胞の多いところにセシウムがあるだけと考えてください。「蓄積する」というと、いつまでも留まると誤解して不安になってしまいます。

5.個人的視点と公共的視点

1000ミリシーベルトあびると5%の人が余分にがんで死亡するというのが、広島・長崎の調査の結果です。もしもの仮定ですが、比例計算すると、10ミリシーベルト被曝すると、0.05%のかたが、がんで余分に死亡するという計算になります。日本では、年間110万人が死亡していますので、10ミリシーベルト余分にあびた人が日本人の10%とすると3.3万人が「がん」で死亡するところが55人が余分に「がん」で死亡し、合計33055人になります。これは、仮定を入れた計算ですが、計算であっても年間55人というのは、無視できない数字です。殺人事件で55人も殺されたら大事件ですし、食中毒で55人も死んだら大変です。また、交通事故で年間数千人死亡することを考えたら、その1%です。放射線の影響を多いと感じられる人と少ないと感じられる方がいるのではないでしょうか。
放射線を年間100ミリシーベルトあびたときに、「がんになる」というちゃんとした研究結果はありません。あるとしても影響が少ないので、「ある」のか「ない」のかはっきりできないのです。別の言い方をすれば、「はっきりしないくらい少ない」、ということです。
個人的に考えるときは、微量放射能のようなはっきりしない要因の場合は他の要因と比較して総合的に選択する。公共的な立場あるいは行政的な立場からは、仮定のある可能性であってもきちんと対処して安心を与えるという観点が大事だと思います。

6. 放射線の害はタバコと比べると非常に少ない

高線量の放射線は、がんの原因となりますので、がんの他の要因と放射線の影響を比較することができます。がんの発症原因は大規模研究から明確な結果がでていますので、これらを比較すれば、どの程度の害があるか感覚的に理解できるはずです。それぞれの原因と10ミリシーベルトをあびたときのがんになりやすさの比較をしました。ただし、10ミリシーベルトの影響は、1000ミリシーベルトの効果を比例計算したもので、10ミリシーベルトでがんになるという結果はありませんので、「〜〜以上」としました。
(1)喫煙の影響は10ミリシーベルトの200倍以上
(2)受動喫煙の影響は10倍以上(たばこ1日10本吸う人と同居)
(3)運動不足の影響30倍以上
(4)野菜不足の影響20倍以上

(4)ストレスは、定量化が難しいのですが私の推定では、200倍以上です。
受動喫煙では、タバコを1日10本吸う人が同居していると、年間100ミリシーベルト以上あびているのと同じということです。放射性セシウムに換算すると、770万ベクレル(1日2万ベクレル)以上になります。こう考えると、受動喫煙を含め喫煙の影響は放射線よりもはるかに大きいことがわかります。

まとめ

放射性セシウムの場合一度に1万ベクレル食べると0.13ミリシーベルトの放射線を余分にうけるに対応します。

年間10万ベクレルの放射性セシウムを日本で食べても、米国での生活よりも放射線をあびる量は少ないのです。

タバコを1日10本吸う人が同居していると、年間100ミリシーベルト以上あびているのと同じで、放射性セシウムを年間770万ベクレル食べるのと同じです。

乳児や子供は放射線の影響も大きいのですが、排出する速度も速いのです。