ミトコンドリア遺伝子の交換について、朝日新聞と日本経済新聞は、以下のような見出しで、25日に英国科学誌Natureに発表された論文を紹介した。
母2人の受精卵が成長 米チーム、遺伝病治療目指す(朝日新聞10月25日)
染色体「交換」で予防 遺伝性難病のミトコンドリア病(日本経済新聞 10月26日)
米オレゴン健康科学大の立花真仁研究員らが25日付英科学誌ネイチャー電子版に発表したものである。
米国内で21~32歳の健康な女性から同意を得て106個の卵子の提供を受け、うち64個に染色体を移し替える操作をし、受精させた。受精卵になった44個のうち19個が胚盤胞と呼ばれる段階まで成長した。胚盤胞は母体に戻せば赤ちゃんになりうる状態。
ただ移し替えをしたうち半数で、染色体の数が通常より多くなるなどの異常が起きた。
この技術が実現すれば、ミトコンドリア遺伝子に異常があり、生まれた子供がミトコンドリア病を発症しかねない母親からも、ミトコンドリア遺伝子に異常のない子供が生まれる。この研究結果では、染色体異常は認められたが、事前に異常な染色体を調べて除外することは可能であると思われる。
実は、ミトコンドリア病だけでなく、もっと多くの適用が可能だと思われる。卵子の老化がすすめば、受精しにくくなるが、これはミトコンドリアの老化が原因のひとつと考えられる。この技術は、卵子の老化による不妊症の治療に使われる可能性の方が大きいだろう。
この場合、父親の核遺伝子、母親の核遺伝子、若い別の女性のミトコンドリア遺伝子をもつ子供になる。