以前紹介しました特許の名称は、「水素を有効成分として含む軽度認知障害又は認知症の予防又は治療用組成物」です。(https://shigeo-ohta.com/topics172/ 参照)
図は、水素水を1年間飲んだ後の軽度認知障害のAPOE4遺伝子型保持者のADAS-score(認知機能の指標)の変化を示した結果です。赤丸と青丸は、一人一人の変化です。プラセボ群では、ほとんど変化がなく、水素水群では、平均3のスコア改善が認められました。現在薬事承認されている薬剤では、3ヶ月後にスコア2の改善がみられ、1年後には改善効果が0になってしまいます。この薬剤の結果と比較すると、水素水によるスコア3の改善は著しいということがわかります。
なお、アルツハイマー病の50-60%は、APOE4の保持者です。将来的には、40歳になったら、遺伝子検査をして、APOE4の保持者であることがわかれば、水素水を積極的に飲むことによって、アルツハイマー病の予防が、少なからず可能になると期待しています。
特許発明の元になる原著論文は、
著者名:Nishimaki K, Asada T, Ohsawa I, Nakajima E, Ikejima C, Yokota T, Kamimura N, Ohta S
発表学術誌:Current Alzheimer research 15(5) 482 – 492 2018年3月
要約の日本語訳
背景:
酸化ストレスは、軽度認知障害(MCI)や認知症などの神経変性疾患の病因となる要因の1つです。以前に分子水素(H2)が治療的および予防的抗酸化剤として機能することを報告しました。
目的:
酸化ストレスモデルのマウスとMCIの被験者に及ぼす水素水(H2を注入した水)の影響を評価します。
方法:
アルデヒド脱水素酵素2のドミナントネガティブ型を発現するトランスジェニックマウスを認知症モデルとして使用しました。酸化ストレスが増強されたマウスに、水素水を飲ませました。さらに、無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験では、MCIを実施した73人の被験者が1日あたり約300 mLの水素水(水素水グループ)またはプラセボ水(コントロールグループ)を飲み、アルツハイマー病評価スケール認知サブスケール(ADAS-cog)スコアを1年後に測定しました。
結果:
マウスでは、水素水を飲むと酸化ストレスマーカーが減少し、記憶障害と神経変性の低下が抑制されました。さらに、水素水グループの平均寿命は、対照グループの平均寿命よりも長くなりました。MCI被験者では、1年後のADAS-cogスコアに水素水群と対照群の間に統計的有意差はありませんでしたが、水素水群のアポリポタンパク質E4(APOE4)遺伝子型のキャリアは、ADAS-cog全体のスコアおよび単語想起タスクスコア(ADAS-cogスコアのサブスコアの1つ)において、有意に改善されました。
結論:
水素水は、酸化ストレスモデルとMCIのAPOE4キャリアで認知症を抑制する可能性があります。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5872374/
から、無料で原著論文を読むことができます。
特許では、この論文の水素水の結果を元に、マウスに水素ガス吸引実験と水素発生素材を食べさせて認知機能改善を確認しましたので、水素水だけではなく、広く「水素を有効成分として」となっています。
なお、この結果だけでは、まだまだ不十分で、大規模な調査が必要です。