2016年3月10日に「活性酸素の1種を抑制する水をつくったとうたった装置」について、報道発表がなされました。
正統的な科学に基づく議論と、インチキ商品と混同・誤解することは、科学の進歩を阻害するものです。
「PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワーク・システム)には、水を電気分解して水素を発生させる装置の効果や活性酸素に関する相談が、2010年度以降、2015年 12月末までの5年間あまりに、220件(医療機器を除く)寄せられており、特に 2014 年度は前年度までの2 倍近くに増えていました。」そこで、「水の中のヒドロキシラジカルを抑制する水をつくるとうたった商品について、ヒドロキシラジカルを消去する能力(以下、「ヒドロキシラジカル消去能」とします。)等を調べ、消費者に情報提供することとしました。」とのことです。
(1) まず、問題としているラジカルですが、hydroxyl radicalであり、日本語ではヒドロキシルラジカルです。そもそも、ヒドロキシラジカルと書かれており、用語の使い方から間違っていますので、科学的議論がなりたつのか疑問です。
(2) 消費者からの疑問として、(事例3)「活性水素生成器の購入を検討中。3日経ってもヒドロキシラジカル抑制率は変化なしと言うが本当か」(事例4)生成された水素水はペットボトルで 2日程度はもつと勧められた。」が紹介されていましたが、そもそも水素水と活性水素は全く別物です。また、水素(H2)は前にも指摘しているように、ペットボトルからはすり抜けてしまいますので、指摘の商品は水素水を作るものではありません。
(3) 国民生活センターが測定した装置の説明として、「72 時間(3日間)保存してもヒドロキシラジカル抑制率はほとんど変わらない」「沸騰しても冷蔵してもヒドロキシラジカルの抑制率を維持する(ほとんど変わらない)」などと書かれています。これは、水素(H2)の性質とは全く違いますので、水素水とは全く別物で無関係です。
(4) そもそも水素水は水素が溶けた水です。砂糖がとけたのが砂糖水。食塩が溶けたのが食塩水。砂糖水が甘いのは水が甘くなったわけではなく、溶けている砂糖が甘いのです。また、食塩水が塩辛いのは水が塩辛くなったのではなく、食塩が塩辛いのです。水素水の場合は、水が変わった訳ではなく、水素の効果です。「水をつくる」という表記自体が、概念的に間違っています。