水素水をめぐる議論に、「水素ガスの吸引効果は理解できるが、水素水の飲用効果はありえない」という意見があります。「水素ガスを吸うなら大量の水素を摂取できるが、水素水からは微量の水素しか摂取できないはずだ」というのが理由のようです。
こういう議論では、単なる印象ではなく、実測や計算が大切です。
吸引させた時の水素ガスの有効濃度は1%(volume/volume)以上であることが動物実験でわかっています。最近の臨床試験では、1.3%、2%、3%(volume/volume)の濃度の水素ガスを吸引させており、動物実験の結果とよく一致しています。水素の飽和濃度が800μMなので、そのときの体内濃度は、10〜24μMとなるはずです。別の単位で表すと0.02〜0.048 ppm(weight/weight) (1リットルあたり20μg〜48μg)です。
では、水素水を飲んだときの体内濃度はどうなるでしょう?これは、人体実験をするわけにはいかないので、ラットを使います。15mL/kgの飽和水素水を飲ませた場合の結果を見てみます。これは、体重40kgの人に600mLの水素水を飲ませた量に対応しますので、極端に多く飲ませた訳ではありません。測定結果では、水素濃度は肝臓で20μMに達することは実測されています。別の単位で表すと0.040 ppm(weight/weight) (1リットルあたり40μg)です。この濃度は、2%の水素ガスを吸わせたときの水素濃度とほぼ一致します。
Molecular hydrogen improves obesity and diabetes by inducing hepatic FGF21 and stimulating energy metabolism in db/db mice. Obesity (Silver Spring). 2011;19:1396-1403.のFigure 1
つまり、水素ガスを吸わせた時と、水素水を飲んだときでは、臓器へ到達する水素濃度はあまり違わないのです。
「腸内細菌が発生する水素よりも水素水を飲む方が効果的」 https://shigeo-ohta.com/topics120/
に説明しましたように、水素の効果は、水素の摂取量ではなくで、水素濃度の変化が重要です。
つまり、水素水の水素でも十分効果を発揮できるはずだということになります。もちろん、水素ガスの吸引と水素水の飲用による体内動態は全く同じだという訳ではありませんが、基本的には同じように考えてよいのではないかと思っています。
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